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【第9回】敷地の広い実家を建て替える際の選択肢(後編)

土地を残す必要性や相続人の状況、本人の価値観などから総合的に判断しよう

前編では、敷地が周辺の区画よりも大きな実家を相続した場合に、自宅として使用しない部分の敷地を有効活用するための選択肢として、「賃貸併用住宅の建築」と「土地の一部売却」を紹介しました。後編では、両者のどちらを選択するかについて、「土地」「収支」「相続」の3つのポイントから比較します。

比較ポイント1:土地
「賃貸併用住宅の建築」のメリットとしてまず挙げられるのは、土地を周辺の区画より大きいまま残せることです。土地全体を賃貸併用住宅の敷地として活用することで、相続した土地のすべてを次世代に引き継がせることが可能となります。

都心部の住宅地をはじめとする地価の高いエリアでは、土地を残す、守ることと、活かすことを実現する手段として、賃貸併用住宅の建築を選択する人が多いかもしれません。

「土地の一部売却」では、自宅として使用しない部分の土地を売却換金することで、売却代金を自宅の建て替え資金に充当できます。売却計画によっては、預貯金を増やすことも可能になるでしょう。

これまで安定的な資産として考えられていた土地ですが、土地神話の崩壊や人口減等で、将来的にその価値を維持できるかどうかは不透明な時代となりました。資産の活用という点では土地の価値が確かな現時点で、換金することも有効な手段なのかもしれません。

 

現時点の収支計画が将来も通用するとは限らない

比較ポイント2:収支
「賃貸併用住宅の建築」では、自宅プラス賃貸部分を建築するため、建物の規模が大きくなります。すると当然、建築費の総額も高くなります。そのため、融資を利用した資金計画を立てることが多いのではないでしょうか。

建物が完成すると、賃貸部分からの賃料収入が見込めます。賃料収入がローン返済額および諸経費を上回るケースでは、入居者が賃貸部分だけでなく、自宅部分のローン返済もしてくれるようなプランとなります。そして、ローン完済後には、手取り収入のアップが期待できます。

「土地の一部売却」では、前提として融資の利用がありませんし、賃貸経営の予定もありません。そのため、「賃貸併用住宅の建築」につきまとう、金利上昇や、空室、賃料下落、修繕費の負担増等、収支計画に関する不安がありません。

現時点でいくら理想的な収支計画を立てたとしても、実際にうまくいくとは限りません。例えば、以前流行した風呂トイレ一体型の3点ユニットが設置された20㎡以下の部屋は、現代の若者には人気がありません。当時、大きな借入をして建築をしたオーナーは、今では入居者確保のため想定外の賃料値下げを余儀なくされています。

売却を考えたとしても、中古の賃貸併用住宅は購入需要が少なく、大幅に価格を下げないと売れません。下手をすると、土地まで一緒に失ってしまうこともありえます。

土地を一部売却して身軽になれば、このような不安から解放されるということも、メリットといえるでしょう。

 

賃貸併用住宅の場合は納税資金・分割対策に注意

比較ポイント3:相続
「賃貸併用住宅の建築」を行うと、貸家建付地の評価減や小規模宅地等の特例の適用により、相続税評価額の減額が見込めるなど、相続税対策として有効となります。実際に多くの方がこの効果を期待して土地活用を行っています。ただし、納税資金対策と分割対策についての検討が不十分になりがちです。注意しておきましょう。

「土地の一部売却」では、土地の評価減については、小規模宅地等の特例の適用により、相続税対策として一定の効果が期待できます。また、納税資金対策と分割対策についても検討する必要はありますが、通常は分けにくい資産となっている「賃貸併用住宅の建築」よりも対策は立てやすくなるでしょう。

このように、「賃貸併用住宅の建築」では、大きな土地を残すために、あるいは土地を活用するために、融資を利用し、大きな建物を建て、賃貸経営を行います。その結果、動かしにくい資産となるため、相続時の評価額は下がることになります。

一方、「土地の一部売却」では、土地を一部手放すことで、その資金を建て替え資金や老後資金に充当できます。資産が分散されると流動性は高くなりますので、遺産分割対策等が行いやすくなります。

どちらを選択するかは、土地を残す必要性や相続人の状況に加え、融資利用に対する抵抗感の大小、賃貸経営に興味があるか等の本人の価値観も関係してきます。

「賃貸併用住宅の建築」と「土地の一部売却」のメリット・デメリットを十分把握したうえで、総合的に判断してください。

 

株式会社フリーダムリンク
代表取締役 CFP®
永田 博宣

 

近代セールス社「ファイナンシャル・アドバイザー」連載~プロが教える不動産の活かし方(2015年12月号)~より転載

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