不動産有効活用は誰のため?
不動産を多く所有していると、いろいろなところから「有効活用しませんか?」「相続対策は大丈夫ですか?」と声を掛けられることも少なくないでしょう。
例えば、ハウスメーカーや金融機関は、「借金をしてアパートを建てましょう」、不動産会社であれば、「売却しましょう」「買換えしましょう」と勧めてきます。
その営業スタイルがどうなのかは別にして、不動産の有効活用を実行するにあたっては、「建てる」「借りる」「売る」は、必要な手段であるのは間違いないでしょう。
ところがよく考えてみると、ハウスメーカーにとっては「建ててもらう」ことが、金融機関にとっては「借りてもらう」ことが、不動産会社にとっては「売ってもらう」ことが目的であって、「不動産有効活用の提案」「相続対策の提案」は、その手段かもしれません…。
「敷地いっぱいに、多額の借金をして最大限の建物を建てることが最良の選択ですか?」
「売りやすい部分から売却していいのでしょうか?」
「その土地だけを対象にした相続対策は、本当の相続対策と言えるでしょうか?」
多額の借金は、賃貸事業収支の悪化を招く可能性がありますし、安易な土地の切り売りは、残された土地の価値を下げてしまいます。また、評価の引き下げだけが相続対策とは言えません。
不動産有効活用実行後のリスクを把握すると同時に、総資産全体での位置づけや今後の方向性等についても十分に検討しておく必要があります。
「不動産有効活用」を実行するにあたって、「建てる」「借りる」「売る」ことは、必要な手段ですが、目的ではありません。
「安定した賃料収入を得るために」「相続対策として」など、不動産有効活用の目的は人それぞれですが、一度「建てる」「借りる」「売る」を行うと、そう簡単にやり直すことはできないものです。
だからこそ、「不動産有効活用」の目的や考えをしっかり持って、勢いに流されないようにしましょう。
CFP 永田 博宣