手付解除
不動産取引における手付金は、特別の約定がなければ、民法により「解約手付」と推定されます。
これにより、買主は支払った手付金を放棄することにより、売主は受領した手付金の倍額を支払うことによりそれぞれ契約を解除できます。
この解除には、特別な理由は必要ありません。
民法では、手付解除ができるのは「相手方が履行の着手をするまで」とされています。
しかし、「何をもって履行の着手とするのか?」について明確な基準がなく、判断が難しいのが実情です。
また、手付解除は自分に解除権があるのと同時に、相手方から契約解除される可能性があるため、契約自体が不安定な状態でもあります。
このような理由から、手付解除については、契約書であらかじめ解除できる期限を定めることが一般的です。
この場合には、「履行の着手」の有無にかかわらず、売主・買主どちらもその期限の経過により手付解除ができなくなり、契約の拘束力は強まります。
当事者双方で相談のうえ期限を設定することが望ましいでしょう。
なお、手付解除の期限の設定は、不動産業者が売主で、買主が不動産業者ではない場合には、宅地建物取引業法により、買主に不利な特約とされ無効とされます。
したがって、不動産業者である売主の履行の着手がなされる以前の特定の期日に契約解除ができなくなるような特約である手付解除の期限は設定していません。
CFP 永田 博宣